石原友明「三十四光年」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
次回9月3日更新予定

artscapeレビュー

石原友明「三十四光年」

2018年08月01日号

会期:2018/07/14~2018/08/12

MEM[東京都]

石原友明は京都市立芸術大学卒業後の1980年代に、裸体のセルフポートレート写真を、紡錘形のキャンバスに感光乳剤で焼き付け、ペインティングを加えた立体作品を発表し始める。今回のMEMの展示では、そのなかの一作である「約束Ⅴ」(1985)、が背景のブルーの布も含めて再現された。ほかに、それらのセルフポートレート作品の元になったネガからあらためてプリントした印画、60点も展示していた。

石原のセルフポートレートは、「ものを身体化すること、身体をイメージ化すること、イメージをもの化すること、を繰り返すひとつのプロセス」として制作されている。初期の細身の体にカメラを向けた作品は、ナルシスティックにも見えなくはない。だが、そこに自己探求を突き詰めていく、クリティカルな眼差しが貫かれていることを見落としてはならないだろう。1980年代のネガを34年後に再プリントするという今回の試みは、老年にさしかかりつつある現在の彼の身体のありようと、かつてのそれとを対比しようという意図も含んでいるのではないかと思う。

もうひとつ、石原が今回「長年放置していた古いネガの整理」に取り組み始めたのは、「日に日に白黒写真の材料が手に入りにくくなって」いることに気づいたためだという。確かに石原に限らず、白黒の銀塩写真を使って仕事をしてきた写真家たちにとって、写真機材の枯渇は大きな問題になりつつある。デジタル化でカバーできない領域が出てくるのは当然のことだが、手をこまねいているわけにもいかない。なんとか安定供給のルートを確保することはできないのだろうか。

2018/07/15(日)(飯沢耕太郎)

2018年08月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ