2018年09月15日号
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artscapeレビュー

「イメージの観測所」岡崎智弘展

2018年09月01日号

会期:2018/08/15~2018/09/09

松屋銀座7階 デザインギャラリー1953 [東京都]

岡崎智弘は、NHK Eテレの子ども番組「デザインあ」の人気コーナー「解散!」や、21_21 DESIGN SIGHTで開催された「デザインの解剖展」の企画制作などを手がけた経験のあるデザイナーだ。「デザインの解剖展」では私もテキスト執筆と編集を担当したため、私にとっては同展の企画にともに携わった仲間でもある。岡崎はいろいろな表現方法に長けているが、特に得意とするのはコマ撮りの映像作品だ。「解散!」は身の回りのものの部品や要素をバラバラに分解し、それらを体系的に並べ、ものの成り立ちを観察する内容である。そもそも「解散!」とは子ども向けにわかりやすく説いた言葉で、それが意味するのは解剖だ。つまり、これは子どもに向けた「デザインの解剖」なのだ。「デザインの解剖展」の企画では、岡崎はつねに自分自身がワクワクしながら、こうすると面白い、こんなものも面白い、と計り知れない発想力でアイデアを練っていた。まるで子どものように目をキラキラとさせながら。そうした純粋な好奇心を原動力に、緻密な手作業で1コマ1コマを撮影することで、皆をアッと言わせる映像作品「解散!」はできあがっているのだろう。

本展の「ことば」「かたち」「はいち」を考察する映像作品も、そうしたユニークな視点と緻密な手作業が結実したものだった。フォークや歯ブラシ、ペンチなど身の回りのものを粘土の台にゆっくり押し沈めていき、その凹んでいく跡だけで外形を観測する映像。ゴーヤやたまねぎ、レンコンなどの野菜を端から順に輪切りにし、その断面図をスタンプにして、それらをつなげた映像。バナナや野球のボールなどを皮だけの状態にして、中身を徐々に減らしていき、その形状が崩れていく映像。そして最後は「解散!」と同じ手法で、軍手の滑り止めのゴム部分や、とうもろこしの実を1粒ずつ剥がしていき、真っ新な生地や芯だけにしてしまう。さらにどこの位置にどの粒が配置されていたのかを記録した配置図まで展示されていた。どちらも600粒前後はあり、想像するだけで気の遠くなるような作業である。そもそもコマ撮りには根気がいる。常人はそれだけで無理だと思ってしまうが、それを軽やかにやってのける岡崎のセンスにはつくづく脱帽する。

岡崎智弘「イメージの観測所」

公式ページ:http://designcommittee.jp/2018/07/20180815.html

2018/08/19(杉江あこ)

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