2018年12月15日号
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artscapeレビュー

建築学生ワークショップ伊勢2018 提案作品講評会

2018年09月15日号

会期:2018/09/02

いせシティプラザ[三重県]

毎年、夏の参加を楽しみしているのが、平沼孝啓が率いるアートアンドアーキテクトフェスタ(AAF)が主催する建築学生ワークショップである。特徴は、建築という分野が抱える両極というべき歴史と構造だ。すなわち、毎回の敷地が、平城宮跡、竹生島、高野山、キトラ古墳、比叡山、伊勢神宮という歴史的な建造物がたつ聖地である(来年は出雲大社、今後は東大寺も予定)。と同時に、実際にモノをつくるワークショップはほかにも存在するが、構造家の佐藤淳や腰原幹雄らがクリティークに入るように、構造的な視点が重視されていることだ。筆者としても構造家から見ると、どのような解釈ができ、またどのように改善できるかといったコメントを聞くのは、とても勉強になる。また興味深いのは、学生が安全性に寄った守りのデザインを出すのに対し、構造家がもっとぎりぎり限界の攻めのデザインにできるはずだと煽ること。実際、それで講評の直前に倒壊した作品も目撃した。

さて、今回は伊勢神宮である。あいにく昨年の台風によって、せんぐう館が被害を受け、勾玉池周辺の敷地を使えず、パヴィリオンの設置場所は駐車場に変更された。いせシティプラザで開催された7月28日の中間講評では、どうなることかと心配したが、9月2日の最終講評では、これまで3年間参加したなかで、クオリティが高い完成作が並んでいた。例年通り、中間から大きく得点を伸ばし、逆転する作品が出るのも、楽しみのひとつである。今回は懸垂線で垂れるロープと同じ形状の構造材が混じりあう、5班のこれまでにないタイプの作品が一等だった。ほかには膜にのっている水量が減少することで形状が変化する2班、石の使い方に複層的な役割を与えながら、結界を形成した6班、鳥居のデザインを脱構築するポストモダン的な7班、版築に挑戦した8班などが印象に残った。会の最後に行なわれた神宮司廳の音羽悟からのあいさつは長かったけど、大変に面白く、これだけ建築に関心をもって、学生を熱く応援する人物が、伊勢神宮から出てきたことが今回の最大の成果ではないかと思う。

5班《届きそうで届かない》


2班《ケをハレ》


6班《サイクル》


7班《伝承によって伝わるもの》


2018/09/02(日)(五十嵐太郎)

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