2018年12月15日号
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artscapeレビュー

クロード・ニコラ・ルドゥー《アル=ケ=スナン王立製塩所》

2018年09月15日号

[フランス、アル=ケ=スナン]

ブザンソンの街から鉄道でおよそ20分。駅からは数分程度。エントランスで巨大なグロッタが出迎えるアル=ケ=スナンの王立製塩所を再訪した。18世紀にクロード・ニコラ・ルドゥーが手がけたもので、半円の輪郭にそって各種の施設が並ぶが、これに想像上の接ぎ木をした円形の理想都市も提案したことでよく知られている。入ってすぐ左側にあるルドゥー博物館に、以前はこれほど大量の模型はなかったと思うので、おそらくリニューアルされて、展示デザインも洗練されている。その内容は理想都市の各施設、リング状に並べたパリの市門ほかのプロジェクトを網羅しており、彼が古典主義を言語として操作しつつ、形態の構成における新しいパラダイムに肉薄していたことがよくわかる。

なお、アル=ケ=スナンでは、バンドデシネの巨匠シュイッテンの兄弟で建築家リュックの展覧会を開催していたことも興味深い。新旧の幻想的な建築家が対峙するからだ。展示では、リュックによる数多くの幻想的な未来都市のドローイングと建築・乗物の模型を紹介していた。デザインのテイストは、有機的、植物系である。例えば、地元のブリュッセルや上海の未来における都市の変化、ルドゥーへのオマージュとして残りの半円を継ぎ足した独自のイメージなど、盛りだくさんだった。ちなみに、アル=ケ=スナン最初の訪問は、当然ネットがない時代であり、ラ・トゥーレットでパンフを発見し、近いことに気づいたのがきっかけである。そしてトーマス・クックの時刻表とにらめっこし、同日にリヨンに戻るにはどうしてもひと駅分、接続がなかったが、歩けばなんとかなると考えて決行した。誰もいない田園風景のなか、線路沿いに1時間弱歩いた思い出がある。

《アル=ケ=スナン王立製塩所》、エントランスのグロッタ(人工の洞窟)


《アル=ケ=スナン王立製塩所》


《アル=ケ=スナン王立製塩所》


円形の理想都市の模型


リュック展


リュック展


2018/08/16(木)(五十嵐太郎)

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