2018年10月15日号
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artscapeレビュー

津田洋甫展──初期作品 1950-60年代

2018年10月01日号

会期:2018/08/25~2018/09/09

MEM[東京都]

津田洋甫(1923~2014)は、奈良県吉野郡大塔村(現・五條市)の出身。1949年に大阪の浪華写真倶楽部(1904年創設)の会員となり、以後同倶楽部の中心メンバーのひとりとして活動した。津田の仕事のなかでは、1960年代後半以降の樹木、水をテーマにした自然写真がよく知られている。だが、今回の展示は、それ以前の「初期作品」によるものだった。

戦前の浪華写真倶楽部は、丹平写真倶楽部、芦屋カメラクラブとともに、関西「新興写真」の展開に中核的な役割を果たしていた。戦後になると、絶大な影響力を持つ指導者だった安井仲治が1942年に死去したこともあって、前衛的、実験的なスタイルは次第に影を潜め、穏当な「サロン写真」の団体に変わっていく。だが、今回展示された津田の作品を見ると、戦後の一時期までは、「一人一党」と称される個性的な表現を追求する傾向が、まだしっかりと残っていたことがよくわかる。戦争の傷跡がまだ生々しく残る建物や風景を、やや強引とさえ思えるような解釈で、コントラストの強いモノクロームの画面に定着していく津田のこの時期の写真群には、力強い生命力が脈打っていた。

残念ながら、そのテンションの高い作品制作は長くは続かなかった。1950年代になると、土門拳が主唱した「リアリズム写真」の影響が関西にも波及し、津田も社会的なドキュメンタリーへの関心を強めていく。さらにその後は自然写真を多く手がけるようになった。それでも1940~60年代初頭の時期には、津田に限らず戦前の「新興写真」を継承していこうとする動きは、全国的に展開されていたはずだ。そのあたりの動きを、もっときちんと掘り起こし、検証していかなければならないだろう。

2018/09/05(飯沢耕太郎)

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