artscapeレビュー

森山大道「東京ブギウギ」

2018年10月15日号

会期:2018/09/15~2018/09/30

NADiff a/p/a/r/t[東京都]

森山大道の新作『東京ブギウギ』(スーパーラボ、2018)は、2017年以降に新宿、渋谷、池袋、浅草、銀座などの路上で撮り下ろした、カラー写真のストリート・スナップをまとめて掲載した写真集である。森山のカラー作品を特徴づける「チャラチャラ」、「ペラペラ」のキッチュな事物のオンパレードで、平成最後の日々の東京の眺めが、B6判の小ぶりな写真集にぎっしりとパッケージされている。今年80歳を迎えるとはとても思えない、若々しい意欲あふれる写真集の造りを大いに楽しむことができた。

『東京ブギウギ』は通常版のほかに200部限定、オリジナルプリント付きの特別版も刊行されている。そのうちの100冊が、東京・恵比寿のNADiff a/p/a/r/tのギャラリー・スペースで展示・販売された。普通の展覧会のように、作品が全部最後まで壁に掛けられているのではなく、販売済みのものは「sold out」の貼り紙を残して撤去されてしまう。僕が見に行った時には、すでにかなりの数の作品が姿を消していた。どうやら、いかにも「森山っぽい」作品からどんどん売れていったようだ。どうしても残り滓を見せられているような気分にはなるが、これはこれで面白い試みなのではないかと思う。ただ、できれば売れた写真の画像をコピーして残していただけるとよかった。そうすれば、「森山っぽい」写真がどんなものなのかの検証もできただろう。

2018/09/26(水)(飯沢耕太郎)

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