2018年12月01日号
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artscapeレビュー

主観主義写真における後藤敬一郎

2018年12月01日号

会期:2018/11/14~2018/12/01

スタジオ35分[東京都]

日本では「主観主義写真」と称されるSubjective Photographyの理念は、1950年代にドイツのオットー・シュタイネルトが提唱して世界中に広がった。現実世界をそのまま忠実に再現・描写するのではなく、写真家の主観性、創造性を強調する彼の主張は、第二次世界大戦前の実験的、前衛的な写真のあり方を、戦後に再び再構築しようとする試みであった。日本では1956年に日本主観主義写真連盟が結成され、『サンケイカメラ』主催で国際主観主義写真展が開催されている。

名古屋在住の後藤敬一郎もその有力作家のひとりで、同時期に、抽象的なオブジェや風景写真を盛んに発表していた。もともと、後藤は日本におけるシュルレアリスムの拠点のひとつであった名古屋で、戦前から前衛写真家としての活動を続けており、戦後は1947年に高田皆義、山本悍右らと写真家グループ「VIVI」を結成するなど、「リアリズム」が主流だった当時の写真界にあって異彩を放つ存在だった。今回の「主観主義写真における後藤敬一郎」展は、1970年代まで旺盛な創作意欲を発揮し続けた彼の、1950年代の活動を中心としたもので、当時のヴィンテージ・プリントのほか、ネガから新たにプリントした未発表写真も多数展示されていた。

スタジオ35分では、以前にも日本主観主義写真連盟のメンバーのひとりだった新山清や大藤薫の展覧会を開催しており、 今後も「主観主義写真」にスポットを当てた展示を企画していくという。これまでは、戦前の「前衛写真」への郷愁といううしろ向きのベクトルで捉えられがちだった「主観主義写真」だが、国際主観主義写真展には大辻清司、石元泰博、奈良原一高らも出品しており、むしろ次世代の新たな写真表現を切り拓く運動だったという見方も出ている。今後の掘り起こしをさらに期待したいものだ。

2018/11/16(金)(飯沢耕太郎)

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