2018年12月01日号
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artscapeレビュー

岩根愛「FUKUSHIMA ONDO」

2018年12月01日号

会期:2018/11/17~2018/12/02

Kanzan Gallery[東京都]

岩根愛は、青幻舎から上梓した『KIPUKA』におさめられた、深みと広がりを備えたハワイの写真群を、いくつかのギャラリーで断続的に展覧会を開催するという形で展開している。10月の銀座ニコンサロンでの「KIPUKA」展に続いて、東京・馬喰町のKanzan Galleryでは、「FUKUSHIMA ONDO」展が開催された(キュレーションは原亜由美)。

岩根はハワイの「BON DANCE」に魅かれて、2006年から取材を続けてきた。その過程で福島の相馬盆唄の唄、踊り、太鼓や笛などを伝え、「FUKUSHIMA ONDO」として流布させるきっかけをつくった日系一世の4家族にたどり着く。今回の展示の中心は、それらの一家を撮影した家族写真の画像を、彼らが過ごしていた居留地の草むらや森に投影した作品である。ほかに、やはり岩根が長年にわたって撮影してきた日系移民の墓石群や「マウイ島に残された最後のサトウキビ畑」の写真、キラウエア火山の溶岩流をテーマとした映像作品《Fissure8》などが展示され、会場の中央には「FUKUSHIMA ONDO」の踊り手たちの手の動きをクローズアップで捉えた、長さ5mのパネルが置かれていた。

銀座ニコンサロンの展示でも感じたのだが、複雑に枝分かれし、異なる地域や時代を飛び越え、結びつけていく「KIPUKA」の写真群を、それほど大きくないスペースで見せるのはやや無理がある。だが、あたかも巡礼のようにギャラリーを回っていくことで、観客は、大きな会場で作品を見るのとはまた違った視覚的体験を味わうことができるではないだろうか。東京・西麻布のKana Kawanishi Photographyでも、同時期にパノラマ作品を中心にした「KIPUKA—Island in My Mind」展が開催された(11月24日〜12月22日)。これらの連続展の延長として、例えばハワイや福島での同作品の展示も考えられそうだ。とはいえ、やはりもっと広いスペースで、まとめて作品を見てみたいという気持ちも抑えがたい。

2018/11/18(日(飯沢耕太郎)

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