artscapeレビュー

─プラザ・ギャラリー30年の軌跡─写真展 光陰矢の如し

2019年01月15日号

会期:2019/01/12~2019/03/31

東京アートミュージアム[東京都]

東京・仙川のプラザ・ギャラリーは1988年10月に開設された。2004年には同ギャラリーの向かいに姉妹スペースというべき東京アートミュージアム(設計・安藤忠雄)がオープンする。今回の展覧会は、同ギャラリーの30周年を記念して企画されたもので、これまで展覧会を開催してきた写真家たち12名が出品している。

桑原敏郎、五井毅彦、小平雅尋、小林のりお、齋藤さだむ、白汚零、鈴木秀ヲ、田村彰英、築地仁、奈良原一高、村越としや、山本糾という出品作家の顔ぶれが感慨深い。1931年生まれの奈良原と、1980年生まれの村越を例外として、ほかの出品者たちの多くは、1970~80年代に「写真とは何か?」、「写真を撮る“私”とは何か?」という根本的な命題をあらためて問い直すところから、写真家としての活動をスタートさせた。その彼らも50歳代~70歳代にさしかかろうとしている。プラザ・ギャリーの30年の歩みは、彼らの活動の範囲と背景が急速に変化していった時期に重なり合っているわけだ。

端的に言えば、その最大の変化はアナログ写真からデジタル写真への移行だろう。彼らもそれに対応しつつ、新たな領域にチャレンジしていった。今回の展示で言えば、鈴木秀ヲのMcDonald’sの看板のMマークをデジタルカメラで撮影したデータをUSBメモリに取り込み、それを破壊して出力した作品、小平雅尋のデジタルカメラに「ベス単」(ヴェスト・ポケット・コダック)のレンズを付けてスナップショットを撮影する試み、五井毅彦の音声付きの動画にテキストを字幕で加え、インスタレーションとして展示した作品などに、現時点での彼らのチャレンジ精神がよくあらわれていた。

もうひとつ感慨深かったのは、本展に当然出品しているはずの山崎博(2017年に逝去)が不在だったことだ。仙川在住だった山崎は、プラザ・ギャラリーの初期にアドバイザーとしてかかわり、同ギャラリーで何度も個展を開催している。桑原敏郎が、山崎の方法論を取り込んだ「カメラを一方向に固定し、フォーカスを移動することや風に揺れる変化を撮影」した連続写真で、彼にオマージュを捧げていた。

2019/01/24(木)(飯沢耕太郎)

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