2019年02月15日号
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artscapeレビュー

明治の写真展『華影』華族たちの絵画主義 ピクトリアリズムを追って

2019年02月01日号

会期:2019/02/05~2019/03/03

JCII フォトサロン[東京都]

『華影(はなのかげ)』は1902年~08(明治35~41)年頃に刊行されていた写真雑誌である。一種の同人誌で、会員はすべて写真を愛好する華族たちだった。当時は、ようやく素人写真家たちを中心に「芸術写真」の気運が盛り上がってきた頃で、『華影』もその流れに沿って創刊されたようだ。なかなか見る機会がなかったのだが、今回、日本カメラ博物館(JCII)が保存している13冊に掲載された写真図版を複写・プリントした作品が初公開された。日本写真史の再構築という意味で、とても有意義な展示といえる。

「最後の将軍」徳川慶喜、その弟の徳川昭武、さらに徳川達道(さとみち)、松平乗長、松平直之、阿部正恒(まさたけ)、戸田忠男、井伊直安、正親町實正(おおぎまち・さねまさ)といった常連作家の作品は、ほとんどがピクトリアリズム(絵画主義)の美意識に則って制作されている。1904年以降に写真家・写真事業家の小川一真と、東京美術学校教授の西洋画家、黒田清輝が作品の審査にあたるようになり、その傾向がより強まった。だがそれだけでなく、身辺の雑事を題材にしたスナップ写真的な写真や、演出を加えて滑稽味を打ち出した作品など、作風の幅はかなり広い。上流階級の手遊びと言ってしまえばそれまでだが、彼らの遊び心溢れる写真群はなかなか魅力的であり、むしろ現代的とさえいえる。兄の徳川慶喜とともに若い頃から写真に親しみ、生涯に1500枚余りの写真原板を残した徳川昭武や、東京美術学校で日本画を学んだという松平乗長らの作画意識は、かなり高度なものがある。彼らの活動を、同時代の日本の写真表現の中にどう位置づけるかが、これからの課題といえるだろう。

2019/02/06(水)(飯沢耕太郎)

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