2019年02月15日号
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artscapeレビュー

岡上淑子「フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」

2019年02月01日号

会期:2019/01/26~2019/04/07

東京都庭園美術館[東京都]

展覧会がどんな会場で開催されるかは、とても大きなファクターなのだが、普段はそれほど強く意識されることはない。だが、旧朝香宮邸を改装した東京都庭園美術館で岡上淑子の作品を見るという経験は、やはり特別なものだった。彼女の優美で繊細だが力強い作品の魅力が、アール・デコ様式の建物やインテリアによってより増幅されて伝わってきたからだ。

2018年1月~3月に高知県立美術館で開催された「岡上淑子コラージュ展──はるかな旅」は、彼女のほぼ全作品が出品された充実した内容だった。それゆえ、その展示からあまり間をおかずに開催された本展がどんなものになるのか、やや不安があった。だが、結果的には、展示作品の内容も展覧会の構成も、従来の岡上淑子像を更新する画期的なものになっていた。

まず、国内収蔵作品に加えて、アメリカ・テキサス州のヒューストン美術館の収蔵作品が「里帰り」している。それに加えて、周辺資料の充実が目につく。岡上のタケミヤ画廊での初個展(1953)をプロデュースした瀧口修造の関連資料、フォトコラージュの元にになった『LIFE』、『VOGUE』、『Harper’s Bazaar』などの原本、洋裁を勉強していた頃の型紙、さらに岡上の作品に登場してくる、バレンシアガやディオールの1950年代のドレスの実物も展示してあった。これらの周辺資料によって、岡上の作品世界がよりくっきりと、立体的に浮かび上がってきていた。

新館には《懺悔室の展望》《翻弄するミューズたち》《私たちは自由よ》の三部構成でフォトコラージュ作品が展示されていた。それぞれ、敗戦後の「荒野」を彷彿とさせる廃墟のイメージ、男性中心の社会を翻弄するコケティッシュなミューズたち、戦後の自由を謳歌する女性たちの出現、という具合に岡上のフォトコラージュを読み解いていく試みは、とてもスリリングで興味深いものだった。担当学芸員の神保京子の、長年にわたる研究の成果がよく発揮されたパートといえる。とはいえ、岡上の仕事をどのように戦後写真の表現の系譜に位置づけていくかは、むしろこれから先の大きな課題となる。1950年代の主観主義写真や実験工房のムーブメントとの関わりも含めて、さらなるパースペクティブの構築が必要になるだろう。

2019/02/05(火)(飯沢耕太郎)

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