2019年02月15日号
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artscapeレビュー

第18回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展 中野泰輔展「HYPER/PIP」

2019年02月01日号

会期:2019/01/29~2019/02/15

ガーディアン・ガーデン[東京都]

第18回写真「1_WALL」展のグランプリ受賞者記念展として開催された中野泰輔の個展会場には、大小60点余りの写真が壁に散りばめられていた。被写体の幅はかなり広く、人、モノなどが見境なく入り混じる場面が写し取られている。その画像の表面が、虹色に輝く気泡を含んだゼリー状の膜に覆われているので、水の中を漂うような浮遊感が生じる。全体的に見ると、開放感よりは閉塞感、どこか歪んだ居心地の悪い画像の集積と言えるだろう。若い女性、子供、パソコンや携帯電話といった頻出するイメージをつなぎ合わせても、中野が何を伝えたいのかはクリアーには見えてこない。むしろ、彼はそのようなロジカルな理解に向かう回路を、かなり意図的に断ち切ろうとしているようだ。結果的に、観客はある種の不快感、欠落感を抱えて会場を後にすることになる。

中野がここで試みようとしているのは、無意識レベルで蠢く欲望や感情に形を与えることだと思う。それは半ば成功しているが、このままだと中途半端なものになりそうでもある。ゼリー状の膜越しに写し出されている世界を見るという、手法の操作性が目につきすぎて、中野の制作行為と共振するような状態にうまく入り込みにくいからだ。写真の選択や会場構成を見る限り、彼の創作意欲と表現能力の高さは疑い容れないので、手法があまり目立たないような方向にシフトしていってほしい。むしろ次作が大事になってくるのではないだろうか。

2019/02/02(土)(飯沢耕太郎)

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