artscapeレビュー

MUTTONI THE DIARY OF WINGS

2009年01月15日号

会期:12月23日

大阪成蹊大学芸術学部 学内ギャラリ-spaceB[大阪府]

光や音楽、小さな人形が箱のシアターの中で精密に作動し、ひとつの物語を展開する作品で知られるムットーニこと武藤政彦氏の公開授業をのぞいた。第一回目の公開講座はずいぶん前に開催されたのだが、氏の若い頃の話にとても心揺さぶられたのを鮮明に覚えている。ムットーニとはアーティストの愛称でありながら、同時に作品そのものも指すらしいが、実際に作品と作家の魅力は一体のものなのだとその時改めて感じたし、こんな授業を受けられる若い学生達がうらやましく思えた。今回もあわせて電動カラクリ人形劇の上演が行なわれた。ギャラリーに設置された5つの小さなステージ台に、バスケットボールプレイヤーや電車に乗ったサラリーマン、風船をもつ少女などの人形が一体ずつ立っている。31の電気回路でそれぞれの独立したエピソードが展開し、最後にはひとつの物語を紡ぎ出すという新作でムットーニの口上もついている。光や箱のシアターそのものはもちろんスゴかったが、なによりも、ひとりの人間の孤独を描いた今回の物語が素敵だった。

2008/12/23(火)(酒井千穂)

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