artscapeレビュー

上野伊三郎+リチ コレクション展──ウィーンから京都へ、建築から工芸へ

2009年02月15日号

会期:1/6~2/8

京都国立近代美術館[京都府]

京都市立美術大学の退任後、教育者としてふたりが活動を続けた京都インターアクト美術学校より寄贈された資料から上野伊三郎、リチの仕事を紹介。私はここで初めて二人のことを知った。特に会場を彩るリチの手がけたテキスタイルデザインや装飾品、小さな箱の作品が魅力的で目を惹く。かわいらしい鳥や花、虫など、自然のモチーフがあしらわれ、色彩にも図案にもウィーン工房で磨かれたセンスに溢れた美しい作品が並ぶ会場では、伊三郎が代表となり結成された日本インターナショナル建築会の建築誌『インターナショナル建築』にもスポットが当てられている。モダニズム建築に対する彼の考え方や、建築会についても触れられているのは興味深いのだが、資料と解説をよく読まないと解りづらいので、リチの作品の数々が可憐で絵本のように想像や目を楽しませてくれる会場では、伊三郎の活動はずいぶん地味に映ってしまう。ただ、もっと知りたいと後でカタログを熟読することになったのでかえって良かったのかも。どちらにしろ質量ともに充実した展覧会でもう一度見たいくらい。

2009/01/05(月)(酒井千穂)

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