artscapeレビュー

高木こずえ展「GROUND」

2009年03月15日号

会期:2009/02/27~2009/03/21

TARO NASU GALLERY[東京都]

今年は高木こずえの年になるのではないか。そんな予感もしてくる意欲あふれる展示である。高木は2006年、東京工芸大学在学中に写真新世紀グランプリを受賞し、今後の活躍が期待されている新進写真家だが、本展が商業ギャラリーでのデビュー個展ということになる。
今回発表されたのは「GROUND」と題する新シリーズ。赤く燃え上がるような雑多なイメージの集合体(自分で撮影した写真をCG処理してコラージュしたもの)が、分割された縦横3メートルほどの大画面に撒き散らされるように渦巻いている2点組がメインの作品である。ほかにコラージュの一個一個の要素を抽出して単独で見せるシリーズ、コラージュそのものを凝縮した火の玉のようなイメージが環のように配置された作品もある。つまり「GROUND」の全体は増殖し、伸び縮みする、流動的なイメージ群によって構成されているのだ。
これらの一つひとつの要素がそれぞれどんな意味合いを持っているのか。それを作者に問いかけても、きちんとした答えは返ってこないだろう。いま彼女のなかで起こっているのは、自分自身にもコントロールがきかない核融合や遺伝子の組み換えのようなもので、そこからどんなものが噴出してくるのかは「神頼み」のようなところがありそうだ。逆にいえばそういう状態こそ、アーティストにとっては、最もスリリングで生産的な表現の磁場であるともいえるだろう。しばらくはこの白熱するマグマのような衝動に身をゆだねていてもいいのではないだろうか。
高木はこのあと上野の森美術館で開催される「VOCA展2009」(3月15日~30日)にも出品予定。秋には赤々舎からこの「GROUND」シリーズを含む写真集が2冊同時刊行されるという。24歳の、普通に可愛い小柄な女の子のなかに潜む表現のマグマの埋蔵量は、まだ底が知れないところがある。

2009/02/27(金)(飯沢耕太郎)

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