artscapeレビュー

井手茂太「コウカシタ」

2009年04月01日号

会期:2009/03/14~2009/03/20

あうるすぽっと[東京都]

まるで巧みなDJプレイに乗せられているようだった。東南アジアのダンサーたちとイデビアン・クルーのメンバーは、異文化や男女の間、また個人の間の接触、そこに生じるズレを引き出し、そのありさまを推進力に舞台を生成させてゆく。それぞれの「間」を生む境界線、例えば、グループAとグループBあるいはレイヤーAとレイヤーBを分かつ線をどこに引くかといった課題は、いまやDJプレイのごときセンスの問題であって、社会をどう認識しているのかといった作家の態度や姿勢を明示する類の事柄ではなくなっているようだ。「それ」が「どうである」といった結論は重要ではなく、「それ」「それ」「それ」と矢継ぎ早に、結論なしにひとがあらわれ、別の誰かと交差する。「賑やかな交通の交点にある高架下だからさ、ここは」と言われればそれまでなんだけれど、交差して、互いにイライラして、最後は、飛行機の爆音のごとき騒音が空間を支配して終幕、というのが井手の描く現在のぼくたちであるとすれば、それはなんとも切ない。
イデビアン・クルー:http://www.idevian.com/

2009/03/14(土)(木村覚)

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