artscapeレビュー

『dA(Document on Architecture)』issue_006 流動性

2009年04月15日号

発行所:田園城市文化事業有限公司(Garden City Publishers)

発行日:2006年

台湾の建築雑誌。創刊は2003年で、テキストは繁体字中国語。本号の特集タイトルは「流動性 Fluidity」で、伊東豊雄を中心として、妹島和世+西沢立衛、小嶋一浩+赤松佳珠子らの建築が取り上げられている。この号は、東海大学(台湾)の曽成徳氏(Chuntei David Tseng)、亜洲大学の謝宗哲氏(Hsieh Tusng-Che)らが全面的に編集に携わったという。
まず出版社について触れておきたい。名前からも伺えるように(日本語であれば、田園都市)、建築・都市関連を中心に、デザイン、ファッション、アート、写真関連の書籍を多く出版している。ル・コルビュジエの『ユルバニスム』が訳されているなど翻訳も多彩だ。日本の建築書の翻訳も多い。『dA』はこの田園城市出版が出す現在唯一の建築雑誌である。
この6号を、台中の東海大学にて謝宗哲さんから頂いた。編集への力の入れ方がすごい。表紙は台中オペラハウスの形態を模して開口部も空けたもの。特集の内容は、日本だと数冊分になりそうなくらい、いわば美味しいとこ取りの作品が詰め込まれている。写真の使い方にも、編集へのこだわりが感じられる。日本の建築学生は、「この本、翻訳されないんですか?」と訊いていたが、逆輸入したくなるくらいの内容だったともいえる。個人的には、妹島和世+西沢立衛に「白色的曖昧」、小嶋一浩+赤松佳珠子に「越境的理由」というサブタイトルが付けられていたのをみて、漢字文化圏の可能性を感じた。理解が出来る。そして日本語と中国語の中間的な不思議な響きを感じた。

2009/03/27(金)(松田達)

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