artscapeレビュー

オランジュリー美術館

2009年05月15日号

[パリ]

チュイルリー公園のオランジュリー美術館の横に、リチャード・セラとおぼしき湾曲した2枚の巨大な鉄板が向い合せに立っていた。なんでこんなところに?と思いつつオランジュリーに入り、ふたつの大きな楕円形の部屋に展示されたモネの連作壁画《睡蓮》を堪能。その後もういちどセラの彫刻と対面したとき、なぜそこに置かれてあるか合点がいった。この彫刻、モネの壁画と呼応しているのだ。鉄板とキャンヴァスという素材の違いはあるけれど、どちらも巨大な湾曲した平面である点が同じ。しかし一方は美術館に恒久設置され、他方は屋外に野ざらしという待遇の差もある。しかも、これによく似たセラの彫刻《傾いた弧》がニューヨークの広場に恒久設置されたのに、住人の反対にあって撤去を余儀なくされたという経緯もある。そんな対比を浮き上がらせる展示なのだ。
オランジュリー美術館:http://www.musee-orangerie.fr/

2009/04/10(金)(村田真)

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