artscapeレビュー

金氏徹平:溶け出す都市、空白の森

2009年06月01日号

会期:2009/03/20~2009/05/27

横浜美術館[神奈川県]

アーティスト、金氏徹平の個展。横浜美術館の企画展示室すべてを用いた大規模な展観になっていた。美術館の広い空間を十分埋めるほどの作品数をそろえ、アニメーション作品に挑戦するなど新たな展開を見せてはいるものの、全体としてはどうにも物足りない印象が否めない。まるで一時ヒットした流行歌のワンフレーズを繰り返し聴かされているようだった。それは、もちろん美術家としての表現の幅が依然として狭いことに由来しているのだろうが、それ以前の問題として、表現にたいする空間の容量があまりにも大きすぎたことにも起因していると思う。たとえば、金氏はかつて「MOTアニュアル2008 解きほぐすとき」ですばらしい展示空間を作り上げたが、それと比べると、今回の展示はどうにも大味で、粗雑な構成だといわざるを得ない。「既製品の再構成」という以上、関心の焦点は再構成の仕方と、その結果作り上げられるその場の空間の質に合わせられるのだから、分相応な空間で勝負させることが企画者の務めではないだろうか。

2009/04/26(日)(福住廉)

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