artscapeレビュー

ブラッドレー・マッカラム&ジャクリーヌ・タリー「思い通りに消せない記憶」

2009年06月01日号

会期:2009/04/11~2009/05/17

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

黒人と白人のパートナーであるというブラッドレー・マッカラムとジャクリーヌ・タリーの個展。2008年に東京に滞在しながら、ちょうど40年前の1968年に報道された社会問題のイメージを加工した作品を発表した。それらはヴェトナム反戦運動、公民権運動、3億円強奪事件などの報道写真の上にレースのようなレイヤーを重ねてつくりだした朦朧としたイメージ。一見すると、歴史的なパブリックイメージの輪郭が薄れつつある現在の窮状を暗示しているようだが、しかし現在のウェブ社会がそれらのイメージを瞬時に召喚することができることを考えれば、むしろその固定化されたパブリックイメージに束縛されていることのほうが問題ではないだろうか。1968年のファントムが忘却されることに歯止めをかけようとするのではなく、それらを相対化しながら別のリアリティと出会おうとすることが課題である。

2009/05/17(日)(福住廉)

2009年06月01日号の
artscapeレビュー