artscapeレビュー

Chim↑Pom「捨てられたちんぽ展」

2009年06月01日号

会期:2009/05/16~2009/05/17

ギャラリー・ヴァギナ(a.k.a. 無人島プロダクション)[東京都]

Chim↑Pomの磁場に入り込むと、ひとは冷静ではいられなくなる。高名な美術評論家が完成作を見る前に美術作品とは到底言い難いと断定したり、ぬるいお騒がせ野郎たちだと断言する美術関係者の口ぶりがなんだかぬるかったり、お手つきを誘発する魔力がある(Chim↑Pomの作品は非美術的というよりも、むしろ生真面目に美術史を参照しているように私には見える。この点で、美術批評、美術史研究の観点から冷静に検証すべきではないだろうか)。本作は、ひとを冷静でいられなくさせるという彼らの本質がそのままの姿で顔を覗かせた。比喩ではない。小さいホワイトキューブには一カ所だけ穴が開いてあり、そこから赤くて頻繁に形状の変化する体の一部がはみ出している。後ろに立つメンバーが無言で会期中(2日間)ひたすら一部を陳列し続けているというわけだ。会場に足を踏み入れると、観客や関係者達が酒盛りをしていた。飲まずにやっていられるか、といった感じ。なんであれが曝されているだけでひとは冷静さを欠いてしまうのだろう。あれは膨張と収縮を黙々と繰り返す。赤くなったり白くなったり忙しい。しゃべりかけるとジェスチャーで返してくる。彼らの名は伊達ではないのだ。ひとの隠している部分を露出させてしまう、それがChim↑Pomなのだ。そうした自分たちの本質をきわめて丁寧に説いた自己批評的作品。ギャラリーの隅っこでは「裸でなにが悪い」と公権力に声を荒げた中年アイドルの在籍するグループ5人分の表札が、本人たちの立ち位置に合わせて壁に掛けてあった(Chim↑Pomの過去作品)。

2009/05/17(木村覚)

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