artscapeレビュー

柴幸男『少年B』(キレなかった14才♥りたーんず)

2009年06月01日号

会期:2009/04/21~2009/05/04

こまばアゴラ劇場[東京都]

36歳の男が、少年時代を振り返る話。少年というものはいつも興奮している。興奮は、現実を正しく計る余裕を奪う。漫才師に憧れ真夜中に友達と練習し、昼間はクラスの合唱大会や女の子に夢中になっている。戯曲は、妄想と現実の曖昧な少年の生活を丁寧に浮き彫りにした。演出も冴えている。強くて超面白いと自分を思いこむ、その思いこみ(空想)を再現フィルムのように演じ、その直後、現実の時間が演じられる。何度かあったそうした上演のアイディアがじつに楽しい。猫の殺害事件や殺人事件が少年の周囲で起きる。自分の仕業かどうか判然としない。そもそも自分の輪郭が曖昧模糊としているのだから当然と言えば当然。その曖昧さはそのままに、気づけば大人になってしまったということに対する辛さ、それがとてもリアルに感じられた。このリアリティは、36歳の主人公演じる同年代の男優を14歳くらいに見えるリアル女子学生と共演させたが故に引き出されたものだろう。

2009/05/02(木村覚)

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