artscapeレビュー

ヤノベケンジ──ウルトラ展

2009年06月15日号

会期:2009/04/11~2009/06/21

豊田市美術館[愛知県]

テスラコイル(人工稲妻発生装置)という巨大な装置の中で火花が散る最新作《ウルトラ──黒い太陽》。これが今展の最大の見どころなのだが、その大掛かりな作品のインパクトよりも、これまでに発表された模型やドローイング、立体作品など、制作の軌跡をたどる会場の展示自体がヤノベケンジという作家の魅力を余すところなく伝えていた印象で、見終わる頃には胸がいっぱいになるような感覚を覚えたのが一番の収穫。ここに至るまでの活動が大きなひとつの物語としてつながっていく面白さ、今後の展開への期待など、想像はあれこれめぐっていくのだが、なによりも、何度も同じ場所に立ち返り、かすんで見えるものを自らの目で確認しようとするような、現実を直視する愚直な姿勢に勇気という言葉が浮かんでくる。
ヤノベケンジ──ウルトラ展:http://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2009/temporary/yanobe_ultra.html

2009/05/02(土)(酒井千穂)

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