artscapeレビュー

鷹野隆大「おれと」

2009年06月15日号

会期:2009/04/28~2009/06/09

NADiff Gallery[東京都]

そのまま地下のNADiff Galleryへ。いつもながら、ぬけぬけとしたタイトルの鷹野隆大の個展である。仰々しい金ぴかやシルバーの額縁におさまった、4×5インチサイズのコンタクトプリントが、壁にずらりと並んでいる。大部分は彼がこれまで発表してきたメール・ヌードのシリーズの副産物というべきもので、全裸のモデルと鷹野本人(こちらも全裸)が、肩を組み、腰に手を回してカメラを見つめる、記念写真的なポートレートである。
なぜこんなことをやろうと思いついたのかはよくわからないが、生真面目さと戸惑いを含んだ表情でこちらを向く二人の表情やポーズが、妙に間をはずしていて笑いを誘う。こういう写真はとかく自虐的になりがちなのだが(深瀬昌久の、互いの舌を搦ませた「ベロベロ」がそうだった)、鷹野がやると風通しのよい「いい加減の」ポートレートに仕上がっている。彼の高度なコミュニケーション能力が的確に発揮された、小品だが味わい深いシリーズだった。なお、ページをめくって動画のような効果を楽しむ写真集『ぱらぱら マリア/としひさ』(Akira Nagasawa Publishing)と『ぱらぱら ソフトクリーム/歯磨き』(同)も同時に発売された。

2009/05/06(水)(飯沢耕太郎)

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