artscapeレビュー

聴竹居との出会い 栗本夏樹 漆芸展

2009年07月01日号

会期:2009/05/22~2009/05/31

聴竹居[京都府]

聴竹居とは、建築家の藤井厚二が昭和3(1928)年に京都府大山崎町に建てた自宅兼実験住宅。西洋のモダニズムと日本の伝統が絶妙に調和したデザインで評価が高く、近年は通風と採光に対する工夫からエコ建築の先駆としても注目されている。この建築遺産を舞台に、漆芸家の栗本夏樹が個展(というより建築とのコラボ展)を開催した。作品は、客室、居間、読書室、寝室、縁側等に配置されたが、出色だったのは縁側の隅に置かれた2点の作品。竹の根を素材にしたオブジェで、まるで最初からそこに置かれていたかのように空間と馴染んでいた。作家が声高に個性を主張するのではなく、空間に寄り添うことで、むしろ互いの魅力が際立ったのだ。そこには理想的なコラボレーションの姿が凛として感じられた。

2009/05/27(水)(小吹隆文)

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