artscapeレビュー

アール・イマキュレ 希望の原理

2009年07月01日号

会期:2009/06/13~2009/06/21

CCAAアートプラザ(ランプ坂ギャラリー)[東京都]

「アール・イマキュレ(無垢の芸術)」とは、ダウン症の人たちがつくりだす芸術作品のことで、その特徴は「自然との一体感、調和を求める心、機知とユーモア」など特有の感性にあるという。本展は、彼らによる絵画、立体、エッチング、コラージュ、タペストリーなど50点あまりを公開したもの。それらの大半は、色を縦横無尽に塗り重ねた作品で、いかにも「無垢な芸術」といえばそうなのかもしれないが、こうした形式的特徴が「自然との一体感、調和を求める心、機知とユーモア」といった芸術的な意味と結びついているようには到底思えない。ダウン症の人たちによる芸術表現を持ち出すのはよい。けれども、それらを「希望の原理」として賞揚するのであれば、それぞれの作品をそのように価値づける言説レベルでの正当化が必要不可欠である。本展のカタログに掲載された中沢新一と長谷川祐子によるテキストは、その役割を果たすにはあまりにも不十分であり、まったくもって用をなさない。「研究」というのであれば、ダウン症の人たちによる芸術表現がなぜ同じような形式的な傾向を帯びているのか、そのメカニズムを解明することによって、それがいかに人類にとっての希望の原理となりうるかを実証的に論証しなければならない。

2009/06/17(水)(福住廉)

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