artscapeレビュー

市川建治 展 花と夢

2009年07月01日号

会期:2009/06/17~2009/06/28

Art Center Ongoing[東京都]

会場に足を踏み入れると、そこにはおっぱいがいっぱい。エロ本の写真を正方形に切り抜き、それらをもとに花々のかたちにコラージュした平面作品や立体作品が展示されていた。とくに平面作品は全体的な視点と個別的な視点によって見分けるとおもしろい。距離をとって全体を見渡してみると、膨大なピクセルの集合によって成り立つデジタル画像を無理やり拡大した図像のような味気なさを感じるが、ひとたび近づいて凝視してみると、女体の集合が醸し出す匂いにむせ返るほどだ。といっても、それらの個別的な図像は唇や下着、腋など、あくまでもパーツに限られているから、いずれも匿名性を帯びており、だからエロティシズムというより、むしろフェティシズムを強く感じさせている。同じように作られた立体作品には、植物の芽が植えられ、再生のイメージが強調されていたが、「エロ本」というメディアがすでに瀕死の状況にあることを考えると、むしろ死のイメージのほうが際立っており、その「生」と「死」の両極を丸ごと画面に定着させようとするフェティッシュな視線が力強くも頼もしい。

2009/06/19(金)(福住廉)

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