artscapeレビュー

岡本太郎・東松照明 写真展「まなざしの向こう側」

2009年08月15日号

会期:前期(本島・久高島編)2009/05/23~2009/06/28
後期(離島編)2009/07/11~2009/08/30
沖縄県立博物館・美術館 コレクションギャラリー1[沖縄県]

インタビューの仕事で、皆既日食の日に、長崎から沖縄・那覇に拠点を移しつつある東松照明氏を訪ねる。ついでに2007年に新装オープンした沖縄県立博物館・美術館で、岡本太郎と東松照明の写真コレクション展を見ることができた。ちょうど開催されていたのは会期の後期にあたる「離島編」で、作品は各18点ほどと少ないが、緊張感あふれるいい展示だった。岡本は1959年の最初の渡沖の時に撮影された石垣島、宮古島、竹富島の写真、東松は1971~73年に撮影された奥武島、伊平屋島、宮古島、波照間島などの写真が中心で、1991年の多良間島のカラー写真もある。
これまで、この二人の沖縄に対するアプローチの仕方は、かなり異なっている印象があった。時代も違うし、撮影の動機も、それぞれの問題意識もかけ離れている。だが、あらためて見ると、むしろ二人の写真の等質性の方が目についてくる。表層的な現実を突き抜けて、そこにある風景の原質、古層というべきイメージを立ち上げるやり方、被写体となる人間や事物のディテールに細やかに分け入りつつ、全体を大きく みとる力──そのあたりがとても似通っているのではないだろうか。二人に共通する民俗学─人類学的な「まなざし」が、沖縄という希有な場所と出会ってスパークし、揺れ騒ぎ、見る者に飛びかかってくるような躍動感のあるイメージ群として形をとっている。

2009/08/22(土)(飯沢耕太郎)

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