artscapeレビュー

鈴木涼子「Recent Works ANIKORA-Kawaii」

2009年08月15日号

会期:2009/07/07~2009/07/31

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

「ジェンダーをテーマに、人間の欲望や社会の歪みに焦点をあてた作品」を制作してきた鈴木涼子。「ANIKORA」のシリーズは、アニメ・キャラのフィギュア人形のボディに、自分自身の顔を画像合成で繋ぎ合わせるという意表をついた発想を展開する。フィギュアの身体パーツは若い男性の性的な欲望の投影であり、畸形的に巨大化した胸とお尻、極端に細い腰と長い脚で作られている。そのエロティックな媚態で、あくまでも受動的なポーズをとる人形に、典型的な日本人顔の鈴木の頭部を接続することで、どうにも身もふたもないズレが生じてくる。そのあたりの批評的でシニカルな笑いの取り方が、このシリーズの見所といえるだろう。
ところが今回の「ANIKORA-Kawaii」では、顔にもかなりの修整が施されていることで、他のパーツとの繋がり具合にあまり違和感がなくなってしまっていた。これ以上滑らかに接続してしまうと、ミイラ取りがミイラになって、ただの「Kawaii」作品としてしか見られないのではないかと心配になってしまうほどだ。プリントだけでなく、液晶ビュアーで見せるという新しい試みの作品も2点展示されていた。ウィンクしたり、画像の一部が微妙に揺らいだりする「動画」的な要素と、静止画像との組み合わせは、さらに大きく展開していく可能性がありそうだ。

2009/07/25(土)(飯沢耕太郎)

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