artscapeレビュー

ある風景の中に

2009年10月01日号

会期:2009/09/15~2009/10/18

京都芸術センター[京都府]

日頃見慣れた風景を改めて見つめ直すことで、何かしらの発見を促す作品を集めた展覧会。キュレーターの安河内宏法はその方法を2種類に分類。風景のなかに元々何があるのかを気付かせる作家として岡田一郎、鈴木昭男、藤枝守を、馴染みやすい物や音と自分との関係を操作する作家として、梅田哲也、矢津吉隆、ニシジマ・アツシを招いた。いずれも質の高い展示を見せてくれたが、筆者が最も感銘を受けたのは梅田哲也のインスタレーション。ワークショップルームという、展示には向かない空間を逆手にとり、一体どこまでが作品でどこからが普段の室内なのかわからないマジカルな空間を創出させた。また、鈴木昭男の出世作である、大量の空き缶を階段から落とすパフォーマンスの再現(観客自身の行動により再現される)も憎い展示だった。一方、ニシジマ・アツシと藤枝守の展示には注文がある。作品解説が欲しいのだ。私はボランティアスタッフの説明を聞くまでまったく見当違いの理解をしていた。同様の観客が少なからずいるはずだ。作品には魅力があるだけに、その点だけが惜しい。それにしても、最近の京都芸術センターの企画展は見応えがある。今後もこの好調を維持してもらいたいものだ。

2009/09/16(水)(小吹隆文)

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