artscapeレビュー

壺中天『遊機体』

2009年10月01日号

会期:2009/09/03~2009/09/06

壺中天[東京都]

向雲太郎が演出と出演を担当する今回の壺中天。ギターの建一郎とライブペインティングの鉄秀をゲストに迎える。この鉄秀が舞台のトーンを支配した。独特の墨のような黒と金と銀の絵の具を用いたパフォーマンスは、壁も床も絵の具まみれにしてゆく。現われては瞬時に消える形状は、たいてい人体をモチーフにしていて、舞台の向の身体と呼応する。フライヤーの言葉「あたらしい、いきもの。」を連想させる向の宇宙人のような身体と軽い動き。よいところはいくつかあった。けれども、ダイナミックともいえるけれど雑にも見えてしまう向と鉄秀2人のバトルは、延々とある一定のペースで進み、とくにバックの音楽との相乗効果で、深夜のクラブで行なわれているような錯覚を感じた。「まったり」感が心地よいともいえるが、舞台という場で行なう表現としては物足りなさも正直あった。

2009/09/03(木)(木村覚)

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