artscapeレビュー

伊東豊雄+藤本壮介+平田晃久+佐藤淳『20XXの建築原理へ』

2009年11月15日号

発行所:INAX出版

発行日:2009年9月30日

伊東豊雄が3人の若手に架空のプロジェクトを依頼するドキュメント本である。選ばれたのは、好敵手の藤本壮介と平田晃久、そして佐藤淳。近代主義を乗りこえるための、伊東の問いかけから始まり、討議、ゲストを交えての研究会、プレゼンテーションを経て、それぞれの21世紀の造形が示される。1960年代のメタボリズムをほうふつさせるような前向きに未来の原理をつかみだそうとする姿勢が気持ちいい。社会の空気に萎縮し、妙に大人びた学生の案よりも、はるかに若々しい。そう、彼らは童心に帰って、建築を楽しんでいる。何をつくったかという最終形を知るだけなら、一冊の本をつくる必要はない。写真を中心にした冊子でも充分である。むしろ、創造というプロセスを四人が共有しながら、建築家として議論する言葉や思考の動きこそが、本書の最大の醍醐味である。ANY会議のような抽象的な議論とは違う、具体性のある刺激的なトークが展開されている。

2009/10/31(土)(五十嵐太郎)

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