artscapeレビュー

神戸ビエンナーレ2009

2009年11月15日号

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパークなど神戸市内各所[兵庫県]

今回で2回目の「神戸ビエンナーレ」。メリケンパークでは輸送用コンテナを展示空間にしたコンペ受賞作品を展示。数あるそのなかでも、牛島光太郎のインスタレーション《window》は面白かった。コンテナの内部は、狭い路地にある“よその家”の玄関前の雰囲気。設置された玄関の扉、窓の向こうに灯る照明を背にして薄暗い通路で、タペストリーに刺繍された4つの長いストーリーを読むのだが、できればそっと足早に立ち去りたいイメージの空間では、どうにもそわそわする気分を禁じ得ない。しかし、この居心地の悪さがかえって作品の魅力だ。不思議なストーリー(でも面白い)とともにインパクトを引きずる。今回のビエンナーレはまた「海上アート展」がユニーク。メリケンパークと兵庫県立美術館のあるHAT神戸を結び運行する船に乗ると、航路の途中の防波堤や突堤に設置された塚脇淳、榎忠、植松圭二らの立体作品を船内から鑑賞できる。船の窓越しに突如現われるような作品に興奮するのだが、近づいたと思えば徐々に遠ざかっていくのがもどかしい。作品自体はゆっくり鑑賞というわけにはいかないのだが、しかし海辺の街や山の風景、風の感触などを同時に楽しめるのも神戸ならでは。あいにく雨だったのでできればもう一度乗りたい。

2009/10/02(金)(酒井千穂)

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