artscapeレビュー

日下部一司「箱写真」

2009年11月15日号

会期:2009/10/08~2009/11/15

京都造形芸術大学芸術館[京都府]

通常のはがきよりも少し小さなDMのイメージが美しくて印象的だったのだが、実際の展示も心躍った。普段は、中央アジアやシルクロードに由来する工芸、縄文時代の土器や装身具などを展示している京都造形芸術大学の芸術館。そのガラスケースのひとつで、「One Piece Gallery」と題した現代美術の作品展が開催されている。今回は3回シリーズの第1回目。蓋つきの小さな桐の箱に入っていたのは、名刺サイズのモノクロ写真。植物や風景がぼんやりと写っている。ほとんどが何気ない日常的な場面のようだが、どれもまるで宝物のように輝いて見えるから不思議だ。当然だが、その貴いほどのイメージは、もはや履いて捨てるほど溜め込んで保存しているデジカメ写真とは月とスッポンくらい違う。小さな箱の中の虚ろな風景世界に引込まれていく心地良いひととき。

2009/10/08(木)(酒井千穂)

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