artscapeレビュー

北九州国際ビエンナーレ2009 「移民」

2009年12月01日号

会期:2009/10/10~2009/11/15

旧JR九州本社ビルほか[福岡県]

福岡県北九州市の門司港で開催された国際展。会場は1回目の2007年と同じ旧JR九州本社ビルで、参加アーティストも、シンガポールのチャールズ・リム以外、前回と同じ面々でそろえられた5組。ただ前回と大きく異なっているのは、出品作品が映像だけで占められており、しかもその形式もほとんど同じだったこと。都市の街並みやそこで労働する人びとを収めた静止画像をわずかに動かしながらゆっくりとクローズアップする映像を、いっさいの音声もなく、ただ延々とループ状に反復させた。映像の形式が統一されているせいか、それぞれのアーティストの個性が打ち消され、集団的な制作活動なのではないかと思えるほど、その内容も同じように見えたが、これが独創的なアーティストという神話を打ち砕く野心的な試みであることはまちがいない。けれども、こうした挑戦的な手法が「移民」という今回のテーマに対応しているのかどうかは甚だ疑問である。画一的に均質化された映像が「世界標準」の名の下に世界の凹凸を平らにならしていく現在のグローバリズムのメタファーとして考えられなくもないが、ではそこからあふれ出し、逃げ出し、移動し続ける「移民」はいったいどこにいるのだろうか。その謎を問いかけたという意味では成功なのかもしれない。けれども、映像を見る快楽をこれほどまで否定する禁欲的な映像が、どこまで問いを問いとして持続させることができるのか、きわめて疑わしい。

2009/11/14(福住廉)

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