artscapeレビュー

鷹野隆大『男の乗り方』

2010年01月15日号

発行所:Akio Nagasawa Publishing

発行日:2009年10月16日

鷹野隆大が2006年のツァイト・フォト・サロンの個展で最初に発表した「男の乗り方」のシリーズが写真集になった。実に面白い。当たり前といえば当たり前なのだが、男の裸が一人ひとりこれほど違っていることに驚きと感動を覚えた。
写真が発明されて以来、天文学的な数字のヌード写真が撮影され、公表されてきたが、そのうちのほとんど大部分は女性のヌードなのではないだろうか。それはむろん、女性ヌードがヘテロセクシャルな欲望を持つ男性にとって魅力的な商品であり続けてきたという、経済的な理由に帰着する。男性ヌードはゲイ・カルチャーのようなやや特殊な領域の中に押し込められ、一般的にはほとんど観客や読者の目に触れる機会はなかったはずだ。それゆえ、男性ヌードを「まともに」「正面から」「しっかりと」撮影したものを、「まともに」「正面から」「しっかりと」見つめることは、今なおとても新鮮で興味深い視覚的体験といえる。『男の乗り方』では、10数人の若い男性が、鷹野のカメラの前でポーズをとる。横たわる姿勢が多く、自然体で、リラックスした表情を見せる彼らを見ていると、その身体の細部が、いきいきとした繊細なフォルムを備えていることがわかる。それは新たな「美」の発見といいたくなるほどだ。
鷹野がそれぞれの写真に付したキャプションも面白い。「左肘をついて寝転がり、右手で膝を抱えるようにしている」「Gパンを半降ろしにして横たわり、革のブレスレットをはめた腕で自分の首を覆うようにしている」等々。ここにも男の身体の細部を精確にスキャンしていく、大胆かつ細やかな視線の運動を感じる。

2009/12/02(水)(飯沢耕太郎)

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