artscapeレビュー

東京芸術大学先端芸術表現科卒業/修了制作2010

2010年02月15日号

会期:2010/01/16~2010/01/24

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

いつになく暗い。物理的に暗いなかで見せる作品も多いが、それより死とか血とか貧とかネガティヴなものをあつかった作品が目につくのだ。貧乏で血に飢えて死期が近い私の気のせいだろうか。それ以外で気になった作品をあげると、カーペットと壁に家具の痕跡だけを残した(描いた)山田繭、ショベルカーの表面の塗装がなくなるまで磨いた柏崎由璃香。しかしこれらもある意味で「ネガティヴ」だ。一方、厖大なドローイングを見せた文谷有佳里と老田真衣や、クレーン車に筆をもたせてドローイングさせた鄭萬英は、少なくとも生産的な「描く」という行為に賭けている点でポジティヴに見える。だが見方を変えれば、日々ドローイングに逃げているともいえるし、機械に描かせるしかないという諦念が感じられるのも事実。やっぱり暗いな。ウクライナ。

2010/01/18(月)(村田真)

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