artscapeレビュー

トウキョウ建築コレクション2010

2010年03月15日号

会期:2010/03/02~2010/03/07

代官山ヒルサイドテラスF棟/ヒルサイド・フォーラム[東京都]

卒業設計に対して修士設計がこれまでそれほどイベント的には取り扱われてこなかったのは、大学院の修士要件が、基本的に修士論文であったからである。しかし、近年多くの大学で、修士設計で修了ができるようになってきており、それが本イベントのはじまった背景としてあるだろう。修士設計の日本一決定戦ともいえるトウキョウ建築コレクションは、2007年に始まり今年で四年目を迎える(初年度のプレイベントとして2006年11月に「トウキョウ建築コネクション」が開かれた)。これまでの修士設計展、修士論文展、講演会に加え、研究室単位のプロジェクトを発表する修士プロジェクト展も加わった。筆者は、今年はじめて会場を訪れた。自分が修士の学生であった時は、このようなイベントはなかったので、まず多くの発表の機会があることに羨ましさを感じた。また卒業設計とはさすがに二年の差を感じさせる、一発勝負ではない完成度をどの作品も持っていた。特に感じたのは、リサーチ的な設計が増えてきていたことである。形にたどり着くまでの思考をリサーチとしてまとめてある作品などが散見されたが、こういった傾向はこれまでにはあまり多くなかったかと思う。いわばリサーチとデザインの統合的な設計が増えてきているという徴候を感じた。なお、論文をA1一枚でプレゼンテーションしてあることや、大学の研究室の特色が見えてくる修士プロジェクト展もとても興味深かった。設計に加えて、論文、プロジェクトなど、多様な発表の機会が同時にあるところが、大学院の活動の広がりを感じさせた。

http://www.tkc-net.org/

2010/03/02(火)(松田達)

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