artscapeレビュー

林大作 展「GAME画面物」

2010年04月15日号

会期:2010/02/16~2010/02/28

neutron kyoto[京都府]

テレビゲームの映像画面を3次元に再現した陶製の作品が並んでいた。登場キャラクター、ドクロマークのビンや武器などのアイテム類、敵と戦う場面のジオラマといった、ゲームのシンボリックなモチーフを立体化した作品は、どれもそれぞれの状況イメージを即座に誘発する既視感がある。表面の仕上げの荒さが目につくのが惜しいが、すべて林自身が架空の物語を設定し、制作したものだという点が面白い。物語の脈絡に興味が湧いて、質問もつぎつぎと湧いてくる。なかでも、行動の選択肢を表示したメニュー画面や、登場人物の会話画面など、たんに文字情報だけの画面を再現したシンプルな箱型の作品が良い。ただ限られた選択肢や情報を示すという一種のサインにすぎないとも言えるが、それらはつくり手の豊かなイマジネーションをもっとも示しているものに思えた。観る者にコミュニケーションを喚起するチャーミングな要素をもっている。あえて陶芸という手法で表現することについて林自身まだ未消化な部分を抱えている様子だったが、言葉と陶の質感や色など、独自の作品世界の魅力を強めていた。今後の活動展開も楽しみだ。

2010/02/28(日)(酒井千穂)

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