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津田大介『Twitter社会論』

2010年05月15日号

発行所:洋泉社

発行日:2009年11月21日

メディアジャーナリストの津田大介によるツイッター概論。本書はツイッターが特に日本で普及し始めた2009年の秋に出版され、そのさらなる火付け役の一端も担ったといえるだろう。ツイッターの説明や特色(第1章)、ツイッターの活用法(第2章)などは、類書やマニュアル本と重なる部分もあるが(とはいえ、本書がその土台となっている部分もあろう)、特に第3章の社会との関係を論じている部分は、モルドバやイランでの情報統制への対抗や、ペプシコーラとコカコーラのフォロー関係、イギリスの公式ガイドラインについてなど、より具体的な情報が興味深い。ツイッターを知るうえでの良書であることは間違いないが、いくつかポジティブに転化しすぎる記述も実は気になった(米海軍がツイッターの使用を禁止していることを、普及期が既に終了したと解釈するなど)。とはいえ、巻末の勝間和代との対談でもキーワードとなっている、いわゆるキャズム(メインストリームに移行する前の深い溝)越えを控えたツイッターの、現在の状況を知るためには、記述も分かりやすく最適の本である。

2010/04/17(土)(松田達)

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