artscapeレビュー

美しき挑発:レンピッカ展

2010年05月15日号

会期:2010/03/06~2010/05/09

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

タマラ・ド・レンピッカといえば、1980年ごろパルコ出版から画集が出たのを覚えているが、それ以前もそれ以後もほとんど名前を聞いたことがない。たまたまその当時の「パルコ文化」と方向性が合致したのだろう。たしかに1920年代の彼女の作品を見ると、ファッショナブルなアールデコ様式でいかにも「時代と寝た」先端的な女性画家といった趣があり、それはそれで興味深い反面、あっさり消費されてしまいかねない薄さも感じてしまうのだ。いわば時代のイラストレーションに堕してしまったというか。そこが80年代的であったと、いまいえる。でも30年代以降(それが彼女の人生の大半を占める)の作品を見ると、時代におもねったり取り残されたり自己模倣を繰り返したりして、それが逆に時代とは隔絶したある種の壮絶さを生み出してもいる。2010年のいま彼女に注目するなら、30年代以降の作品だろう。

2010/04/22(木)(村田真)

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