artscapeレビュー

富士山 展

2010年06月01日号

会期:2010/04/28~2010/05/16

ニュートロン東京[東京都]

富士山をテーマとしたグループ展。三瀬夏之介や山本太郎など9人のアーティストが絵画や映像などで富士山を表現したが、全体的に記号としての富士山を単純に持ち込んだ作品が多く、まるで物足りない。富士山とはいうまでもなく「日本」を象徴する役割を背負わされた表象であり、それはつまりさまざまな思想的な立場が激突する闘技場でもある。であれば、作品を見る側としては、そのような闘争こそ作品なり展覧会に見出したいという点がひとつ。もうひとつは、そうしたことを芸術に期待する考え方がすでに時代錯誤だとしても、闘争的な側面から富士山を開放するだけの別の文脈が用意されているわけでもないということ。ただ記号としての富士山が宙ぶらりんのまま作品のなかで消費されているという状況が、はたして何を意味しているのか、最後まで理解に苦しんだ。

2010/05/12(水)(福住廉)

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