artscapeレビュー

川田喜久治「ワールズ・エンド Worlds’s End 2008-2010」

2010年06月15日号

会期:2010/05/13~2010/07/10

フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]

1933年生まれの川田喜久治は、いまでも週に何日かは「プールで泳いでいる」のだという。70歳代後半だが、気力も体力もまだまだ充実していることが、この新作展からも伝わってきた。
2008年の暮れから2010年3月まで「毎日撮影することを自分に課した」その成果が並んでいる。撮影場所は東京がほとんどだが、あえて今回は、自分が住んでいるこの場所のいまを撮影するというこだわりがあったようだ。前作の「ユリイカ Eureka 全都市」(2005年)、「見えない都市 Invisible City」(2006年)と同様に、デジタルカメラの連写機能やパソコンでの合成や色味の変換を活かした作品が並ぶが、シャドー部の翳りがより強調され、不穏当な気配がさらに大きく迫り出してきているように感じる。全体的に無機的なモノと有機的な生命体とが絡み合うハイブリッドな状況に強く引きつけられるものがあるようだ。その「一瞬のねじれやファルス」を追い求めていくと、どうもフレーム入りの写真が整然と並んでいる、静まりかえった会場の雰囲気とはややそぐわないようにも思えてくる。
これはほんの思いつきだが、逆にノイズがあふれる工事現場のような場所で見たかったような気がする。ノイズ・ミュージックをバックにしたスライドショーのような形も面白いかもしれない。そんなふうに思わせるような、「はみ出していく」エネルギーが、作品に渦巻いているということだろう。

2010/05/21(金)(飯沢耕太郎)

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