artscapeレビュー

武盾一郎 Real FantASIA

2010年08月01日号

会期:2010/07/09~2010/07/18

gallery TEN[東京都]

ストリートのアーティストとして知られる武盾一郎の初個展。新宿西口や渋谷の路上、神戸の被災地で絵を描いては発表してきた武にとって、画廊での個展は初めてだという。展示されていたのは緻密に描き込まれたペン画で、その細密な線の集積と空虚な余白の対比が美しい。一見すると近頃流行の細密画の一種にしか見えないが、武の制作と発表の場の大半が路上だったことを考えると、この対比は鬱積した内面とそれを容易には受け入れない無情な社会の対立を表わしているように見えなくもない。画廊制度に則ることなく、剥き出しの路上で絵を描くことの厳しさを見る者に突きつける、痛々しいまでの気迫にあふれた展示だった。

2010/07/15(木)(福住廉)

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