artscapeレビュー

BASARA

2010年09月01日号

会期:2010/08/04~2010/08/09

スパイラルガーデン ギャラリー[東京都]

武闘派の現代美術家、天明屋尚がキュレイションを手掛けた企画展。「BASARA」とは、14世紀の南北朝時代に頻繁に用いられた、豪奢な華美を好む美意識や時世粧を表わす「婆娑羅」を、特定の時代を指す用語としてではなく、現代にまで脈々と通底する、ある種の「遺伝子」として提起するために、天明屋が開発した造語である。天明屋自身をはじめ、池田学、井上雄彦、歌川国芳、河鍋暁斎、三代目彫よし、月岡芳年、野口哲哉、HITOTZUKI(KAMI+SASU)、村山留里子、山口晃、横尾忠則など、ジャンルも世代もバラバラのアーティスト24組が参加したほか、縄文土器や印籠、根付、デコ電、デコトラなど、「BASARA」を体現すると考えられる数々のモノも併せて展示された。いやったらしい縄文土器から全身に刺青をまとった男たちの写真、色彩豊かな細密画から蒔絵のバイクなどが立ち並んだ会場は、まさしく絢爛豪華。パンチの効いた造形が次々と眼に飛び込んでくるのが楽しい。なるほど、「BASARA」がたんなる様式のひとつにとどまらず、日本美術の全体を貫く底流のひとつであることがよくわかるし、アニメやマンガに由来するオタク文化がのさばり、対外的にも「クールジャパン」として制度的に定着したいま、それを現状に対する「宣戦布告」として打ち出す意義はかなり大きい。「スーパーフラット」から「マイクロポップ」へと続いた昨今の日本の現代アートの流れを、大きく切り換えるエポックメイキングな展覧会として評価できると思う。ただし、疑問点がないわけではない。それは、本展の企画者である天明屋自身の作品に、若干の違和感が残ったということだ。きらびやかな色彩や緻密な描写、あるいはおどろおどろしい造形による作品が大半を占めていただけに、天明屋による《思念遊戯》(2009)の落ち着いた画面は奇妙に目立っている。刀剣を持ちながら取っ組み合う2人の任侠が描かれていることから、これはもしかしたら過剰に飾り立てる「BASARA」の背後に控える死生観の現われなのかもしれない。けれども、絵の細部に眼を凝らして見ると、そこには人体を縁取る繊細な線描や金箔を敷き詰めた後景、蛸のなまめかしい曲線、そして何よりもマットな色彩による彫り物の描写などがあり、それらは「BASARA」の破戒美というより、むしろ洗練された調和美、あるいは端正な典雅の印象を強めてしまっている。作品と概念との齟齬を、実作の面ではなく、少なくとも理論的にどのように埋め合わせるのか、そこに今後の課題が残されている気がしたが、ともあれ画期的で挑発的な展覧会だったことはまちがいない。今回はごくごく短期間の展覧会だったので、ぜひ公立美術館に場所を移して、巡回してほしい。

2010/08/04(水)(福住廉)

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