artscapeレビュー

快快×B-Floorコラボレーション作品『どこでもdoor』

2010年09月01日号

会期:2010/08/13~2010/08/15

東京芸術劇場小ホール[東京都]

こりゃ「タイの快快」だ!なんて思わされたB-Floorと短時間でつくったコラボ作品。タイトルにあるようにベースはシンプルで、ドアをひとつ用意して行ったり来たりする。終幕あたりでぐっときた場面があった。観客に合図を送り拍手をさせるとその音が「雨」になり、役者たちはそれまで観客とやりとりしていた商いをやめて雨宿りをはじめる。あらかじめ観客に20バーツ札を渡してあってそれで行商人たちと値切り交渉を楽しんでくれという趣向。拍手=雨なんていうのも快快らしい参加型のアイディア。こういうのはとてもよかった。「タイの雨」や「タイでの値切り」を湿度や熱気を錯覚するほどに体感できた。とはいえ、小さなアイディアの数々がひとつの束としてまとまることはなかった。いや、あるルール(台本や演出方法)を決めて、それに沿って作品づくりをすればこぎれいにまとめあげることは短期間でも可能だったかもしれない。強いルール設定を拒んだのだろう。その一方、二組の出会ったことそれ自体が主題化された。結果として、学生や社員がオリエンテーションで行なう即席の芝居と大きくは変わらないものになってしまったかもしれない。とはいえ、時折つぶやかれたセリフ「ア・ジ・ノ・モ・ト」は印象的で、二組が共有できる単語であった以上に、すべてを同じ(旨い)味にしてしまう調味料(的存在)に対する批判を含んだものであったに違いない。ゆえにちょっと薄味だった舞台。その分、素材(役者たちの個性)を感じることができた。

2010/08/15(日)(木村覚)

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