artscapeレビュー

山田周平「“アメリカの夜”[Day for Night]」

2010年11月15日号

会期:2010/09/25~2010/10/23

AISHO MIURA ARTS[東京都]

滝口浩史、伊賀美和子に続いて、「写真新世紀」の出身者の展示を見ることができた。山田周平は2003年の同展で優秀賞(飯沢耕太郎選)を受賞している。僕自身もかかわったコンペの入賞者が、順調にそのキャリアを伸ばしているのを見るのはとても嬉しい。力があっても、さまざまな理由で制作活動を中断してしまう人も多いからだ。
今回の「“アメリカの夜”[Day for Night]」に出品されているのは、新作の「Untitled-park」のシリーズで、公園の風景の上半分が漆黒の闇に覆われているように見える作品である。同じ場所で昼と夜に同じ絞り、シャッタースピードで撮影した二枚の写真を合成したもので、シンプルだが、印象的で深みのあるイメージに仕上がっていた。山田はもともと、既存の眺めに何かを付け加えたり削ったりしながら、その意味合いを変換してしまう手法を展開してきた。今回は「記録した場所性の排除に加え、色、時間、までも削除の対象に」するという、徹底したミニマル化を試みた。以前に比べて、その手つきが洗練されてきているとともに、静止画像に加えて動画による作品にも意欲的に取り組んでいる。今後も、写真と映像作品の両方の分野にまたがる活動が期待できそうだ。
なお、タイトルの「“アメリカの夜”[Day for Night]」は、フランソワ・トリュフォー監督の1973年製作の映画から引用されたもの。カメラのレンズにフィルターをかけて、昼間に夜のシーンをつくり出すというトリック撮影のことだが、このシリーズの謎めいた雰囲気をより強調する効果的なタイトルだと思う。ただ、この映画のことをまったく知らない若い世代には、ちょっとわかりにくいかもしれない。

2010/10/08(金)(飯沢耕太郎)

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