artscapeレビュー

岡上淑子「夜間訪問」

2010年11月15日号

会期:2010/10/06~2010/10/31

LIBRAIRIE6[東京都]

岡上淑子(1928年~)は1953年、25歳で「岡上淑子コラージュ展」(タケミヤ画廊)を開催してデビューした。そのシュルレアリスムに強く影響された、センスのいい、繊細なフォト・コラージュ作品は、瀧口修造をはじめとする批評家たちに高く評価されて一躍注目を集めた。ところがわずか数年の活動期間を経て、その後ほとんど作品を発表しなくなる。それから40年余りが過ぎ、1990年代になって、この幻の作家の作品にふたたびスポットライトが当たってきた。展覧会が開催され、アメリカのNazreeli Pressからは作品集やポートフォリオが刊行されて、彼女の名前は国際的にも広く知られるようになったのだ。
今回の展示は、1950年代のオリジナル作品4点に、シルクスクリーンによる複製、Nazreeli Press版のポートフォリオからの抜粋を含むものだった。数は少ないが、岡上淑子のオリジナルを見る機会はほとんどないので、貴重な展覧会といえるだろう。その乙女の夢がそのまま凝固したような幻想世界は、いまでも充分に新鮮で魅力的だ。デジタル時代だからこそ、鋏と糊でつくられるコラージュという古風な表現手段の面白さも再発見できそうな気がする。なお会場のLIBRAIRIE6は、恵比寿駅の近くにできたギャラリーとアンティークの店。シュルレアリスム関係の書籍やオブジェなども販売しており、今後の活動が期待できそうだ。

2010/10/15(金)(飯沢耕太郎)

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