artscapeレビュー

建築新人戦2010

2010年11月15日号

会期:2010/10/02

梅田スカイビル・タワーウエスト3階ステラホール[大阪府]

建築新人戦2010は、登録者数733、応募作品454点にのぼったという。前年の応募作品数は171点だったというので、2年目にして巨大規模の大会に成長したといえよう。せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦が、4年次での卒業設計を競うのに対して、建築新人戦では、3年次までの作品により競う。実質的には2年生と3年生による戦いだといえる。今回の最大の山場は、最優秀新人賞を決める際に、意見が二つに分かれたところであろう。そこまで多少複雑な審査過程を経たが、最終的には、藤本壮介氏が小島衆太案を推し、大西麻貴氏が平山健太案を推したかたちとなった。争点は「空間があるかないか」(内部空間のある種の豊かさが表現されているかどうか)であり、平山案は「空間がない」ために押せないという藤本氏に対して、「外部空間はある」と大西氏は切り返した。会場で拍手の大きさを求めるも、明確な違いは見えなかった。最終的には、バランスのとれ、総合点で優ったかもしれない平山案より、大学が表通りにはみ出すという都市との関連を示すと同時に、印象的な空間性を提示した小島案が、最優秀となった。審査委員長の竹山聖氏は、この案を選んだことについて「せんだいの卒業設計日本一が、ピッチャーとして完成されたコントロールのあるスピードボールを投げるピッチャーを選ぶとすると、建築新人戦というのは、コントロールがなくても生きたすごい球を投げるやつを選ぶんだ」と分かりやすく表現している。実際、筆者もゲストコメンテーターとして審査の場におり、応援演説で小島案を推したのであるが、同じくゲストコメンテーターとして来ていた五十嵐太郎氏は逆に平山案を推しており、この「空間があるかないか」を建築の評価基準にすることの是非は、今後も議論していく価値のある重要なポイントではないかと感じられた。建築新人戦はすでに秋における最大の建築学生のためのイベントとなり、今後は韓国、中国の学生も交えて、アジア一を競うかもしれないという。来年以降のさらなる展開に期待と注目が集まるだろう。

2010/10/02(土)(松田達)

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