artscapeレビュー

髙瀬省三・石橋聖肖展

2010年12月01日号

会期:2010/11/09~2010/12/23

平塚市美術館[神奈川県]

湘南ゆかりの作家を取り上げた二人展。流木から人体や顔など空想的な造形を彫り出す髙瀬と、彫金によって幻想的なオブジェを作る石橋の作品がそれぞれ展示された。両者による作品は、技法は異なるものの、静謐な空気感を醸し出す点では共通しており、それらが会場全体を静かに包み込んでいた。自然の造形を生かしたまま人為的な造形を目指す髙瀬の作品は、いずれも彫刻家にありがちな自然をねじ伏せるという男性的な構えではなく、むしろ自然に寄り添うようなたおやかな姿勢が一貫しており、その無理のない自然な態度が今日的な感性と共鳴しているような気がした。ただし、一部の作品をガラスケースに入れて展示していたのは、作品保護の観点からなのだろうが、不自然極まりなく、作品の主旨を活かしきれていなかったように思う。細やかな彫金によって極小の世界を創り出す石橋の作品も、キリコのような幻想性を強く感じさせながら、作品を天上から吊るす展示方法のおかげなのか、同時に重力から解き放たれたような浮遊感も感じさせていた。二人展としてはかなり成功している稀有な展覧会である。

2010/11/16(火)(福住廉)

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